在日ミャンマー人×就職支援の未来は?
カイが歩む先に見えるのは、
日本企業とミャンマー人の架け橋。
〝なぜ日本で働くのか?〟を大切にしてきたミャンマー出身のカイが推し進めているのは、外国人が日本で働くための就職支援サービス。2015年5月に日本初開催。今ではミャンマー人を採用したい企業と日本で働きたいミャンマー人をマッチングする国内最大級の就職イベントに成長した「ミャンマーJOBフェア」は、いかに生まれてきたのでしょう?
STORY 01日本で働く、
アルバイトタイムスで働く、を決めたわけ。
ミャンマー国で生まれ育ったカイジィンチョー(以下、カイ)が、日本で働きたいと思うようになったのは高校時代。
「私が通う高校に日本のNGO団体から診療所の建物と設備の寄付をいただきました。世界各国へ寄付やボランティア活動をしている日本人の優しい心に感動したことや、式典で日本語通訳をされていたミャンマー人女性の働く姿が輝いて見えました」。そして、将来は日本とミャンマーの架け橋として活躍したいと思い描くように。
今ではキャリアアドバイザーとして日本のビジネス用語も流暢に話すカイですが、異国で、母国語以外の言葉を使って就きたい仕事を探し、働くことは決して容易ではありませんでした。ミャンマーの大学で日本語や日本の文化や社会について学んだ後、奈良と大阪で留学を経験。国際コミュニケーションや日本の社会問題、IT技術を学びます。
しかし、就職活動は苦労続きだったと言います。「当時はまだ外国人が日本で働く企業を探すには情報収集や知識のシェアが困難な時代でした。関西では外国人向けの合同説明会も年1回ほど。そんな時に東京のアジア人材セミナーにブース出展していたアルバイトタイムスと出会いました」。面接の時、アルバイトタイムスは人材系のメディア会社でミャンマーに進出する計画があると聞き、「ミャンマー人の就職や仕事を探すことに対して役に立つ人間になりたい」と思い、働くことを決意します。
働き始めた頃、コミュニケーションへの不安を抱えていたという。「国や文化の違う私に、お互いに理解し合おうという職場の雰囲気に恵まれました。皆がとても親切で、メンバーが仕事や日本のビジネスで大切なことを教えてくれたり、上司が仕事以外の相談も聞いてくれたことは、心強かったです」とカイは振り返ります。
もっとも苦労したのは電話対応。「ビジネス会話に間違いがないように、とても緊張したことを覚えています。そんな時、先輩や上司はいつも笑顔で〝大丈夫、上手になったね〟と声をかけてもらい、新人の私を支えてくれたことが何より嬉しかったです」。
STORY 02「ミャンマーJOBフェア」が
国内最大級のイベントになるまで。
入社1年目に外国人採用支援事業を任されたカイは、自分が就職活動で苦労した体験を基に採用支援サービスができればと、在日ミャンマー人留学生の進学状況や就職先などのリサーチ、外国人向けの就職セミナーに参加するなと精力的な行動で、上長と相談しながら企画を練り上げていきます。
ミャンマー人とのネットワーク作りではFacebookを活用することで人材プールを確保してきました。「ミャンマー人のための情報収集や知識をシェアする場がなかったので、SNSでネットワークを作り、皆さんに役立ち、欲しい情報の発信を続けています」。
カイはリサーチを重ねながら、日本語の履歴書や職務履歴書の書き方、エントリーシートの準備、面接時のマナーの難しさなどなどミャンマー人が苦労しているポイントを探り、ミャンマー人に特化した「ミャンマーJOBフェア」を2015年5月に開催。
今では日本の企業担当者とミャンマー人のマッチングの場として、200~300人の登録者数と10~15社が参加する日本最大級のイベントに成長しています。
「ミャンマー人が日本で良い就職ができて、生活レベルも向上すれば家族や周りの環境もよくなって、母国の成長にも繋がってきます。就職や転職先が決まった方から〝ありがとう〟と言っていただけることが私のやりがいになっています」。
STORY 03「就職支援」×「日本で働く」をトータルサポート。
日本で働く在日ミャンマー人にとって、ミャンマー語も用いながら就職活動をサポートするジョブフェアは、なくてはならない存在になっています。
さらに、ジョブフェアに留まらず、履歴書や職務経歴書の書き方、面接の受け方、キャリアアップの考え方などの講座やセミナーを開き、日本で働くために必要な知識や意識の底上げを図るため、サービス領域を拡大中。
「私は人とコミュニケーションをとることや、相談にのって助け合うことが好きです。来日した外国人の方々との就職相談では、その人が将来は何になりたい?何をしたい?を聞くことにしています。目標達成のために、希望する企業のメリットやデメリットも紹介しながら将来価値のある就職・転職をしてもらえるよう、色々な方面からアドバイスをしています」。
在日ミャンマー人留学生と社会人に向けたコミュニケーションにも積極的なカイは、在日ミャンマー人コミュニティネットワークリーダーとしても活動しています。
彼女の取組みの後押しにもなっているアルバイトタイムスからの活動支援代を利用し、日本のルールやマナーセミナー、日本での進学先の先輩との交流会や相談会、在日ミャンマー人留学生のスピーチコンテストなど様々な活動を継続的に開催中。
「スピーチコンテストでは日本人やミャンマーの社会や文化の理解を深めるテーマを設けています」と話すカイは日本で働くためのコミュニティネットワークを拡げるため、交流の場を創り出しています。
STORY 04これからの私。新たな挑戦へ。
海外からの人材を受け入れたいとする日本企業が増加する時代に、カイは今以上に教育サポートを深めるサービスを充実させ、在日ミャンマー人の知識と意欲を高めることでより良い人材を紹介していきたいと考えています。
「ITエンジニア人材に向けたキャリアアップセミナーでは、転職に必要な面接・履歴書の書き方にとどまらず、キャリアアップに必要な志向や行動など、質を高めていきたい」と言う。
今後はセミナー以外にもオンライン講座の開設にも意欲を示す、カイの日本での挑戦はまだまだはじまったばかり。この先、アルバイトタイムスで進めていく様々な就職支援サービスが、カイの成長、日本企業とミャンマー国の成長に繋がっていきそうです。